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2018.07.22

クリスマス(ぷち?)リプレイ 第3話:後編

第3話後編です。前編からお読みください。





ScreenShot_20180721_005807137.jpg

眼前に横たわる黒々とした森。イーレンの森だ。
馭者の焦りを反映してか、橇は森の中の道を速い速度で駆け抜ける。
木々が飛ぶように後方に去っていく。

森の中から響く狼の声!
まとわりつくその声を振り払うように、ヨーハンは馬を走らせる。

森の中の道をどのくらい進んだろうか。かなりの距離を飛ばしてきたはずだ。出口まで遠くはあるまい。
しかし……馬は足を停め、立ち尽くした。
闇の中から現れる狼の姿!森の奥にはなおも多くの眼が光っている。

「囲まれたようだな……今は3,4頭ほどだが、まだ増えそうだ」

cw_sariman.png「このままでは不利ですね。戦いながら前に進むしか方法はありません」

ヨーハンによれば、森を抜けるまであと500歩ほど。

500歩……
追撃をかわしながら逃走に専念するか、狼をねじ伏せながら前進するか。
ザックスも護身用の小剣を構えて合図を待っている。
サリマンは――

cw_sariman.png「走って!」

鋭く叫ぶと、詰所から詰んできた松明に火を付け思い切り振り回した。
狼たちが怯み、輓馬が通り抜けられるほどの余裕が出来る。すかさずヨーハンが笞を入れた。

雪に足を取られ思うように進めない橇と併走してゆく。
地を這うような低い息づかいが橇に追いすがってきた。雪の冷たい匂いにまじり、つんとした獣臭さがときおり鼻をつく。
緊張の糸を解けば彼らの歯牙はたちまちこちらを襲うだろう。恐怖を覚えないわけではなかった。
――1,2,3……今近くにいる狼は3体と見当を付ける。
狼は群れで狩りをする動物だ。狩りの気配に気付けばさらに集まってくるだろう。

ScreenShot_20180720_232739479.jpg 

サリマンとザックスが松明で牽制しながら橇を走らせるが、思うように進めない。
いつの間にか気配が一頭増えている。

cw_sariman.png「今です!早く!」

ヨーハンがもう一度笞を当てると、橇は滑らかに雪上を走った。
が、指示を出した一瞬の隙を突いて、左方から距離を詰めてきた狼がサリマンの腕に食らいついた。

cw_sariman.png「うわあ!」

すさまじい力で引き倒そうとしてくる狼の巨体に振り回されながら、サリマンはとっさにクロスボウの柄を狼の額に叩き付ける。
鈍い手応え。甲高い悲鳴が上がる。たまらず腕を放し、獣は泡を食って後ずさっていった。

ScreenShot_20180720_233130426.jpg 

ザックス医師の安否を問う声が飛ぶ。

cw_sariman.png「大丈夫…たいしたことはありません」

噴き出した冷や汗をぬぐった。少し肉が裂けたが、痛みさえ無視できればまだ武器の扱いに支障はなさそうだ。
手元を見れば皮の手甲が引きちぎられてぼろぼろになっている。松明もさっきので取り落としてしまった。

先ほどの手負いの一頭を、クロスボウの矢が捉える。
(仕留めた)
そう思ったのもつかの間、闇の奥から別の一頭が躍り出す。きりがない。
遅々として進まぬ橇に焦りが芽生え始める。
――今はいい。だけど、馬がもっと疲れてしまえば。疲れて、走れなくなったところを、喉笛に食らいつかれてしまえば。
ぞっとする。さっき腕ごと引きずり回そうとした、あのすさまじい力……

cw_sariman.png「(落ち着け……落ち着け)」
cw_sariman.png「(……そうだ。別に、無理に倒す必要はないんだ)」

奴らは人間の何倍もの嗅覚と聴覚を持つ狩人だ。
片手がポーチの中のものをつかむ。
そうだ。私には、私のやり方がある。

cw_sariman.png「……こっちにだって、冒険者の意地があるんですよっ」

暗闇にまぎれ、飛んでいったそれは空中でばらけ――
パパパパパパン!!
次の瞬間、狼たちのすぐ鼻先で火薬が炸裂した。

「!!」

ただの癇癪玉だ。
それでも人間の何倍もの聴力を持つ狼にとっては怯むに充分だったろう。
隙を突いてサリマンが放ったクロスボウの矢が手前を走る一頭に命中し、もんどりうって脱落していく。
持っていた癇癪玉は今のきり。だが何頭かは今の音で散らせたようだ。
ザックス医師も驚いたふうだったが、小剣を振り回して果敢に応戦している。

追撃をかわし、ひたすら走る。
狼の気配を探ると、脱落したものを除き、5頭。
息が乱れる。雪が足元をぐっしょりと濡らし、泥をかいているように冷たく重い。
まだなのか――

そう思った時、木々の間に灯りが現れた。緩やかな曲がり道の先に、それがいくつもゆらめいている。
ヨーハンの身を案じた村人たちか。向こうもわれわれに気付いたようだ。
村人たちは叫び声を上げ、松明を振り回しながら森に踏み込んで来た。

ScreenShot_20180720_234932520.jpg 

さしもの狼も形勢不利を悟ったか、森の闇の中に消えていった。

助かった。
橇に倒れるように座り込む。

「かたじけない。村の衆。さあ、急ごうかの。果たさねばならん務めがある」

*****************************************

ScreenShot_20180720_235813099.jpg 

ヨーハンの娘が持ってきたスープをすすると、満腹感と疲労からかどっと眠気が出てきた。
そうだ、本来ならば門衛の詰所で仮眠を取っていても良かったのだった。
眠るどころでない隣室には悪いとは思ったが、しばしの間まどろみに身を委ねた。

「お子はもう大丈夫だ。部屋を暖かくして安静にしておくがよい」

医師の力強い声。居間に集まった家人たちは安堵の表情を浮かべ、何人かは一斉に十字を切った。
ヨーハンが礼を言う。

「なに、お子の生命力と、お前さんの親心、そしてサリマンのおかげだ」

サリマンはまぶしそうに目を細める。

cw_sariman.png「ああ、夜が明ける」

目に涙を浮かべて医師と冒険者に感謝するヨーハンの家族。
かれらにとって、今年の聖誕祭は忘れられない日になろう。

「先生、サリマンさん……本当にありがとうごぜえやした」
「薬代や護衛料の代わり、ちゅうてはなんでごぜえやすが……村の自前の葡萄酒でやす。納めてくだせえ」

サリマンとザックス医師はヨーハンの橇に乗って、帰途についた。

*****************************************

東門でヨーハンやザックスと別れ、当番を終えて組合に戻っていたディルクに首尾を報告しに行った。

「お疲れさん。まず、門衛の報酬だ」

ScreenShot_20180721_001507912.jpg 

「サリマンがいて良かった。お百姓とお医者と病気の子供と、聖誕祭に葬式を出さずに済んだよ」
「いやはや、本当に助かった。また頼むよ」

cw_sariman.png「来年の聖夜は勘弁願いたいですね」

感謝の言葉に胸がくすぐられる。サリマンはちょっとはにかんで肩を竦めた。

「……あ、それからだな、ゲルダとジェルジからヒマなら遊びに来いって伝言だ。今日は寝てるそうだが」

cw_sariman.png「伝言どうも。私も帰って寝ます」

*****************************************

ScreenShot_20180721_001712612.jpg 

20130502060836bb2.png「あっ!」
20130502060836bb2.png「おかえりなさーい、サリマン。ちょうど親父さんと話してたところだったんだ」
宿の亭主「疲れたろ。ちょっと待ってな。ニンニクスープを作ってやる」
cw_sariman.png「宴会明けで寝てるのかと思ってました」
宿の亭主「お前さんが腹空かして戻ってくるだろうからな」


湿ったままだった服を着替えて戻ってくると、ミネルバがてってことニンニクスープを運んできてくれた。

cw_sariman.png「どうもありがとう。こんな朝から親父さんの手伝いを?」
20130502060836bb2.png「うん。昨日の片付けもあったし、どうせ早く起きてたし」
宿の亭主「まさか今朝も鍛錬に行っとったのか?精が出るな」
20130502060836bb2.png「あはは、いつものことだよ。さ、冷めないうちに飲んだ飲んだ!」

親父が作ったニンニクスープはとてもあたたかだった。
冷え切った体の芯まで染み渡る。

宿の亭主「いま七面鳥を炙り直してる。聖誕祭にはみんなでコレをつつくと決まっておるんだ」

親父は「昨日の残り物で悪いがね」などと言ってるが、別に取っていてくれたのだろう。

宿の亭主「聖誕祭おめでとう」
cw_sariman.png「おめでとうございます」
20130502060836bb2.png「おめでとー!」

いつも通りの朝だ。宿の娘さんや同宿の仲間たちもちらほら降りてきた。

20130502060838464.png「おかえりなさい。ケーキ食べます?」
cw_asato2.png「おう、おかえりサリマン。昨日は大変だったんだろ? お、七面鳥!」
宿の亭主「お前ら、夕べも食っただろうが。これはサリマンの分!」
cw_sariman.png「いいんですよ親父さん。こういうのは大勢の方が楽しいんですから」

平穏な日常を守る、聖夜の守護者。
あなたは誰かの心の中に暖かい光を灯している。
聖夜に働くあなたに幸せが訪れますように。


""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
【今回のくもつ亭】
20130502060937db9.png「…そうか、門衛の仕事だけではなかったのか」
cw_sariman.png「色々とあってね。橇に乗って夜の森を駆け回るはめになりましたよ。ああ眠い…」
20130502060936fb3.png「ふうん、そういうのはなんて言うのだったか……ああそうだ、サンタクロースだね」
20130502060838464.png「あれ、私たちもそうだったんですよ。神父様の依頼で子供達にプレゼントを届けて、おいしいスープをごちそうになって…」
cw_sariman.png「なんとまあ。私もそっちが良かったなあ……」
20130502060836bb2.png「アサトは昨日夜までなにやってたの?」
cw_asato2.png「えっ…まあオレも色々あってさ……なんつーか…ちょっと通り魔やってたっていうか…」
20130502060936fb3.png「…通り魔」
20130502060836bb2.png「…何だか知らないけど討伐しとこう」


(効果(絶叫).wav)

以上、
第1話『聖夜の街は白に染まる』(あががが様)
第2話『mint candy ☆ snow drop』(羊候様)(リンク切れ…)
第3話『聖夜の守護者』(竹庵様)

でした!シナリオのご紹介が遅れてしまいすみません。
サリマン、おかえり…!
5年前のクリスマスに出て行ったきり、みたいな感じになっていましたので(実時間的に)、
よく帰ってきてくれたァ!!
(全て私の不徳の致すところであります。はい)


◆『聖夜の街は白に染まる』
なんだかもうかわいそうでいいですよね。こういう聖夜もあるさ。そして最後にちらっと出てくるあの二人。
親父さんのあたたかさが染みます。だけどパイはほどほどにしておけよ。同作者さんの『ポラレスの実』も大好きです。

◆『mint candy ☆ snow drop』
心の底からほっこりさせてもらえるシナリオ。子供達へのプレゼントを選ぶのは、下手な選択肢よりも頭を悩まされました。
対象レベルもかなり低めですが戦闘もなく、どんな冒険者でも和んでしまうことうけあい。今はDL不可なのでしょうか…悲しい。

◆『聖夜の守護者』
聖夜に働くあなたに祝福を!ラストの一言には胸がぽかぽか。もちろん後半で無償の人助けをする必要はありませんが、名乗り出てあげるとかっこいいです。
某サイトさんでは「寒くてあったかい」と評されていらっしゃいましたが、しっくりきますね…雰囲気が大好きです。


あったかいシナリオ、大好きなんですよねえ…



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この記事へのコメント

コメ返信返ししておいて今更ですが。
お帰りなさい、待ってました。

長過ぎる追記:ちなみに先ほどちらっと書いたうちの最新大規模宿は4~5チーム分のオリキャラが好き勝手やってます、悪役依頼も普通に。人狼歌姫とその押しかけ変態下僕で『キノコはこれから』やった時は暴走側(下僕の方)のキャラがハマり過ぎて本当に笑いました。
あとキャラ設定が元々SF系オリキャラだからとトーベルシリーズの主人公にしたら上とは逆に性別以外ほぼ一致してなくてリプレイ化が大変な事になったりとか。
一番面白くて大変だったのは『落花と流水』→『黄昏の恋人』をやった時でした。単純に3周+2場面分のリプレイ化が大変で落花主人公兼黄昏相棒枠がイメージに嵌り過ぎた黄昏冒頭が面白いと言うか悶えた。
Posted by 名無し at 2018.07.31 02:14 | 編集

ウワーありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです!
PTたくさんお作りなのですね。キャラにはまった時は格別の楽しさを感じますねー。
リプレイ化は確かに大変だあ…。どんな起こし方かにもよりますが…
Posted by くもつ at 2018.08.12 22:47 | 編集
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