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2018.07.22

クリスマス(ぷち?)リプレイ 第3話:前編

クリスマスリプレイ、第3話前編です! え?今は夏ですって? し、知らねぇなあ。




-12/24 午後4時-

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cw_sariman.png「……寒い」

とめどなく舞い降りる雪がリューンを真っ白に塗りつぶしている。
午後4時。太陽が沈んでしまうと、あとはしんしんと冷え込んでゆくばかりだ。
行き交う人通りが途絶え、リューンの市門が閉まったのを見届けて、サリマンはぐるぐるに巻きつけたマフラーのすそをぐいと首元へ押し込んだ。

交代の時間、明朝8時までこの門を守ること。それが、今晩の仕事だ。

「しかし、本格的に降り出してきたわね」穴熊亭のゲルダが白い息を吐く。
「雪だるまになってしまいますよ」サリマンは肩を竦めた。手足はもうすっかり冷え始めていた。


<聖夜の守護者>


さて、なぜ聖夜に徹夜の張り番などするハメになったのか。

ScreenShot_20180714_212917305.jpg

今日の朝早く、リューン自警組合隊長の一人であるディルクが宿に来て警備の仕事を持ちかけてきた。
とあるいきさつからディルクとは顔見知りで、運悪く居合わせたサリマンに白羽の矢が立てられたというわけだ。

cw_sariman.png「(…まあ、隊長にはお世話になったしなあ)」

「髭亭」のジェルジ、「穴熊亭」のゲルダも、もう引き受けることになっているのだという。
うまく丸め込まれた気がしないでもなかったが、ほかならぬ隊長の頼みということで引き受けることにしたのだった。

約束の午後3時半。
サリマンは自警組合の建物の前で冒険者二人と出くわした。

ScreenShot_20180714_213024833.jpgScreenShot_20180714_213027736.jpg

cw_sariman.png「ちょっと待った。ディルク隊長、何時に来ました?」

「10時半過ぎだったわ。依頼の話して、スープだけ飲んで帰って行った」

「こっちには10時だ。ゲルダもサリマンも引き受けたぞ、とか言ってソーセージ食って帰ってったぞ」

cw_sariman.png「ウチには9時です。……隊長にやられましたね」

噂の当人がにこにこしながらやってくる。
彼らはそれを各々諦めたような顔つきで出迎えるのだった。

*****************************************

任務は東門とその周辺の警備。
夜間は市門を閉め、基本的に何人も出入りさせない規則となっている。
市門の外は飢えた狼達が徘徊する危険な雪原が広がる場所だ。

日が沈んで一時間ほどするころ、雪はいよいよ激しく降りしきった。
冗談抜きで雪だるまだ。何かをしゃべる気力もない。

午後5時半に雪は小止みになった。
門の正面で立ち番をし、望楼から遠くを見渡し、市壁の周囲を巡回する。
これといって変わったことはない。
さえぎるもののない吹きっさらし。焚き火や暖炉のぬくもりが無性に恋しい。

cw_sariman.png「(……これは自警隊員の方が風邪をひくのも無理はないか)」

確か、風邪で倒れた隊員たちの代わりに冒険者らが駆り出されたのだとディルクから聞いていた。

午後8時半、小休憩。
一足先に仮眠に向かったディルク隊長を見送る。
熱いお茶を飲みながらゲルダと他愛のない話をする。

そして午後10時、ディルク隊長が待ちに待った休憩を告げに迎えに来た。

cw_sariman.png「待ちわびましたよ。有りがたい!」

サリマンはエミールという若い隊員と共に詰所へ入った。
詰所の暖炉が、暖かい光を放っている。凍えきった指の先々に血が音を立てて巡っていくようだ。

ScreenShot_20180720_215437700.jpg 

「生き返りますねえ」

暖炉にかけなおした銅鍋からエミールが熱々のスープを注いでくれる。
胃の腑の底まで冷え切ったところにはまたとないごちそうだ。
煮崩れたじゃがいも、味の染みたキャベツ。そしてぷりぷりしたソーセージ。
ふうふう言いながら空腹を満たす。

「サリマンさんも、急に駆り出されて大変ですね」

cw_sariman.png「今日だけで風邪ひきそうです。人手不足で冒険者に声がかかるのもわかる気がしてきましたよ」

はぐはぐとキャベツを頬張る。

cw_sariman.png「でもそんなにひどいんですか、常勤隊の風邪」

「カールさんは新婚ホヤホヤだし、ホルストさんは奥さんが妊娠中。
ミヒャエルさんは5人目の子供さんが生まれたとこだし――」

それにフリッツさんは、出てった奥さんが昨日戻ってきたそうですからね。エミールが頷く。

cw_sariman.png「……なるほどね」

確かにそれでは門番どころではない。風邪でも何でもひいて、ゆっくり養生しなくては。

暖かい毛布を借り、サリマンはごろりと横になった。仮眠の時間を小一時間ほどもらえることになっている。
想像以上に身体は疲れていたようだ。心地良い手足の温かさを感じたと思うと、いつの間にかすとんと眠りに落ちていた。

*****************************************

午後11時半に教会の鐘で始まりを告げた深夜礼拝は、午前1時にさしかかっても続いているようだった。
深い夜を満たすのは舞いつづける白い雪と雪の降り積む音。

「北側、異常なし」
「南側、異常ありません」
「ご苦労さん」

定期報告を呼び交わす声。
雪を踏む足音と白い息が、門を守る者たちが確かにいることを伝える。

*****************************************

-12/25 午前4時-

先ほどまで降っていた雪は止んだ。

cw_sariman.png「…森の狼がずいぶん騒いでますね」

サリマンの休憩の番になっていた。詰所へ引上げようとした矢先、異変を知らせる声が上がった。
遠くから鈴の音が近づいてくる。

「1頭立ての橇が1台、来ます!」

「夜の森を突っ切るとは無茶をする」

ディルクが小走りにやってきた。
サリマンが門の前に出て橇を止まらせると、手綱を操っていた中年の男が一人、荒い息を吐いている。
男はフルダ村のヨーハンといった。

ScreenShot_20180720_225944009.jpg 

「息子が高熱出して死にそうなんで、お医者のザックス先生を迎えに上がったんでやす。後生でやす、通してくだせえ」

「あんたも死にそうだ。 エミール!先生叩き起こして来い」

ディルクが若い隊員へ下知を飛ばす。

「ヨーハンさん。とりあえず、詰所で少し暖まれ。 アドルフ、留守頼む」

男に付き添い、サリマンも詰所へと場所を移した。

*****************************************

フルダ村からリューンまで一里半。途中、飢えた狼のうろつくイーレンの森を抜けなければならない。
ヨーハンは家人の制止を振り切って飛び出してきたらしい。子を案じる親の一念とはいえ、あまりに無謀だ。
ジェルジとゲルダは一様に彼をねぎらった。ヨーハンはディルクの淹れた暖かいハーブティーを飲んでいるが、相変わらず落ち着かない様子だ。無理もない。

ザックス医師は義侠心に富んだ医者だ。むかし冒険者をしていたという噂もある。
他の医者がいやがる貧乏人の診察も引き受け、近郊の村にも労を厭わず往診する。
だが夜明け前、しかも狼の出る森を通っての往診だ。快く応じてくれるとは限らない。

しばらくするとエミールが往診鞄を提げた医師を連れて戻ってきた。

ScreenShot_20180720_230615150.jpg 

ザックス医師は日頃から愛想の良い顔ではないが、こんな時間に叩き起こされたせいか、よけい不機嫌な表情に見える。
ヨーハンが息子の容態を訴え、往診を請うている。

「わかった、すぐ行こう。とにかく時間が惜しい」

ザックスは扉を開けながら振り返った。室内にびょうびょうと寒気が流れ込む。

「誰か一人、護衛についてくれ。狼がいるとなると心細い」

cw_sariman.png「………」

サリマンは迷った。
考えたのは追加報酬の心配でも、暖かい詰所を離れる億劫さでもなかった。
――私でいいのか。
私で、はたしてつとまるだろうか?
もちろん、これまでの歳月で武器や道具の扱いはそれなりに慣れたものだが、戦いは得意とはいえない。
護衛といわれると適任ではないだろう。
ちらりと周囲を伺うと、ジェルジとゲルダも何となく顔を見合わせている。
もう一度ザックス医師を見ると、彼は冒険者らの返事を待たず、橇へ乗り込もうとしていた。

cw_sariman.png「――私が」

つい、言葉が口をついた。
それを引っ込めるわけにもいかず、サリマンが橇のそばへ駆けよると、ザックスが凍える風に眉をしかめながらじろりとこちらを見た。
――私では……
頼りないと判じられるだろうか。
サリマンが進みあぐねていると、ザックスは促すように橇の後ろを示した。

「すまん、名前は?」

cw_sariman.png「…サリマン。くもつ亭の冒険者です」

クロスボウを携え、小さな橇の後ろに乗り込む。
寒風ふきすさぶ扉の外。
ヨーハンが馬に当てた笞(むち)とともに、橇は滑らかに走り出した。




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