--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2
2013.10.15

きまぐれリプレイ『かぼちゃの日』:後編

後編です。前編よりお読みください。



「…しかし娘さん、いつの間に私たちの荷物にお菓子をひそませてたんでしょうね」

「そういうところ抜け目ないよね、娘さん。でも助かったよ」

娘さんがしのばせたお菓子で魔女の使い魔を手なずけつつ、シェリス達は扉の前に立っていた。

「ええと……ノックは4回、と」

コンコン、コンコン。
きっかり4回ノックすると、扉は満足そうに道を開けた。


「…さっきは押しても引いても駄目だったのに。扉の考えてることはよくわからないな」

「それは押せ押せじゃあ女の子に嫌われちゃうに決まってるよ、ユーリ。やり方っていうのがあるんだから」

「……む」

シェリスが背後のやりとりにくすくす笑いながら扉を開く。と――

「…しっ!止まってください」

部屋の中に置かれた石像の陰で何かが動いている。

「……さっきのかぼちゃ?」

シェリスの肩越しにミネルバが内部をのぞく。

ScreenShot_20131012_011200985.jpg


「いえ、違うようですが……」

敵にしてはあまりに小さく無防備なその姿にシェリスが首をかしげていると、かぼちゃは振り返った。

「……あー!今日のお昼見た顔だ!くもつ亭の、ねぼすけ冒険者!」

「…今朝の僕らを知っているということは、君が例のいたずら小僧と小娘のうちの一人か?」

ユーリは腕を組んで緑の眼を細めた。
ふよふよとただようその姿は人間ではあり得ない。
が、娘さんから聞いたとおりならば、子供らは妖魔の姿に変えられているはずである。


「ぎく。え、えええ、そそ、そんなのひ、人違いじゃないかなあ!」

「…なんともわかりやすい動揺ぶりですね。あなた、ジェニーでしょう?」

シェリスが呆れたようなため息をつくと、かぼちゃのジェニーはあっさりと自分の悪行を白状した。
このかぼちゃ好きの少女は皆が魔法の杖一振りでかぼちゃになってしまうのが面白くて、つい街中の人をかぼちゃにしてしまったという。
けれど楽しかったのもしばらくの間で、どうすれば人々を元に戻せるかがわからないことに気が付いた。


「悩んでたら、一緒にいたトムが魔女に聞いてみたらいいって言うからここに来たんだけど」

「トムはどこに?」

一緒にいた少年は、館の入口にあった落とし穴に落ちてしまったのだという。少女は浮遊していたので助かったのだろう。

「杖は取られちゃったし、多分、この石像の下が怪しいと思うんだけど、一人じゃ動かせないし……
 ずっと1人ぼっちで。うう、トム……」

心から反省しているように、かぼちゃはしおしおと項垂れた。

「みんなにも、冒険者にも、その、迷惑かけてごめんなさい」

「………」

ミネルバはすこし目を伏せて考えてから、かぼちゃのジェニーに語りかけた。

「ジェニー。反省したなら、もう二度とこんな真似はしないね?」

「うん……」

ジェニーはしょげている。

「みんなにも、ひとりひとりに向かって謝るよね」

「……はい!」

「うん、なら僕はもう何も言わない。これを動かそう。トムを助けに行こうか」

ミネルバはぽんとかぼちゃの小さな頭に手を乗せた。
今日はハロウィンの日。子ども達のいたずらが、ほんの少しは大目に見られる日でもある。






再会の願いは思ったよりも早く叶えられた。
落とし穴に落ちたアサト、エルト、サリマンが、ミイラ男になったトムを担いでまさにその階段の下までやってきていたのだ。


「うわあ、トム、なんてぼろぼろに!」

「……じぇ、にー」

「はい!チョコ、キャンディー、クッキー、ケーキ、パイにパフェ!」

「う、ぐ、ちょ、ちょっと待って。ジェニー、ま」

トムがひどい怪我をしているのを見ると、かぼちゃのジェニーはものすごい勢いで彼の口の中にお菓子を詰め込み始めた。
パフェって。
あれ逆に死なないかな、と思ったが意外と元気になったので結果オーライ……だろう。たぶん。


「ともかく無事でよかったぜ…シェリィ!像を動かしてくれて助かった。
 階段の上が塞がってたときはどうしようかと思ったからなあ」

「……ねえねえ、僕もいるんだけど」

「おふくろの事は別に心配しなくても――痛え!」

「つーん」

「…おいコラ!子供かあんたは!」

アサトは涙目で踏まれた足を押さえた。


「みなさん無事でよかった。子どもたちは捕まえましたけど、まだ…」

「諸悪の根源の姿を一度も拝んでいないな。この館の何処かに居る筈だが」

シェリスはうなずく。

「ジェニーの話だと、隣の部屋に上への階段があるそうです。…ですけど」

「どうかしたのか」

「…パンプキンパイくれないと通さないって言われてしまって」

成程、とエルトは呟いた。地下でもそういった要求をしてくる扉に遭遇している。
提灯ジャックから無理矢理渡された南瓜を喰わせてなんとか通れたのだが。


「…なら問題無い。パンプキンパイならアサトが持っている」

地下で提灯ジャックの仕事を手伝って――ほんのいくつかアドバイスをしただけだが――貰ったパイが手元にはある。
シェリスは目を丸くした。


「え、あるんですか。…でもアサトさん、取っちゃったら怒りません?」

アサトは滑りそうになった。

「どんだけ食い意地はってんだオレは。……ま、後で食おうとは思ってたけどさ。
 そんなら、とっとと解決して祭りのお菓子をめいっぱい食うことにするよ」

「…そうですね、このままじゃ前夜祭もできないもの。早いとこ魔女を懲らしめちゃいましょう!」

シェリスはぐっと拳を握った。





「……ふう。解除できましたよ」

仕掛けられた罠と鍵を解除し終えて、サリマンは静かに扉から後ずさった。
アサトはいやに重たい扉をゆっくりと開く。
暗やみに塗り潰された部屋の真ん中にぽつりと居座る…ぱさついた髪に高い鼻、とんがり帽子を身につけた老女こそが、はたしてこの屋敷のあるじであった。


ScreenShot_20131015_025805650.jpg


「イーッヒッヒ、よく来たねえ。人避けの魔法をかけてたのにご苦労なことだ。
 子ども達もよく来たねえ!」

「がくがく」
「ぶるぶる」

むりやり一行にくっついてきたトムとジェニーは、部屋に充満する魔法の重圧に震えている。
それでも逃げ出そうとしないあたり、天晴れな心構えといえるだろう。
ミネルバは二人の前に立ちはだかるように一歩前に出ると、何故子ども達に杖など渡したのか、と問うた。


「イーヒッヒ!退屈だったんでね。なにせ今日はかぼちゃの日なんだ。
 みーんなかぼちゃになっちまったら、面白いじゃないか!」

「つまり暇つぶしか……」

そんなことだろうと思った、という表情でユーリが口を挟む。

「そりゃ、『イーッヒッヒ!』って言いながら謎の鍋をかき混ぜるだけの仕事なんて飽きるわなぁ」

「他のこともやってるでしょう……知らないですけど」

ついでにアサトとサリマンが要らないやりとりを挟む。

「たまには物言えぬものの身になってものを考えるのもいいだろうよ!」

魔女は枯木のような身体をゆすって甲高い声で笑う。
その仕草は、どことなく先のかぼちゃ幽霊に似ている気もする。

魔女は、自分を倒さねばこの屋敷からは出られないと付け加えた。


「シンプルでいいな。オレ達が勝ったらとっとと出してもらうぜ、ばあちゃん」

「おっと、街の人たちもちゃんと元に戻してもらうからね」

ミネルバが言い添える。

「イーヒッヒ、勝ったならね!」


「よっしゃあ、となれば先手必しょ……」

「南瓜におなり!」

「ひえーー!」

ScreenShot_20131015_134349953.jpg
▲「………」

ともかく、5人は無事、魔女に勝利した。





「…かくかくしかじか、というわけです」

「まるまるうまうま、だったのね。おつかれさま」

娘さんから熱い紅茶のティーカップを受け取りながら、シェリスはうなずいた。

「さっき外を見たらみんな元に戻っていたわよ。今夜の前夜祭もちゃんと開かれるんじゃないかしら」

「本当ですか?やったあ」

「帰りにうっかり治安隊に捕まっちゃったりしたけど、頑張ったかいがあったねえ」

甘くした紅茶をひとくち啜って、ミネルバはほっこりした。
館を出た後、街の人たちに謝りにいくというトムとジェニーと別れたあとに今更事件をかぎつけたらしい治安隊に職務質問され、宿に帰り着いたのが先ほどの話だ。
お菓子をつまみながら、ようやっと帰ってきたわが宿でシェリスとミネルバはくつろいでいた。


「…あ、お菓子もっとありますよ。スイートポテトがいいです?モンブラン?」

「わあ、おいしそう。どこで買ったの?」

「木の葉通りの菓蜜工房さんですよ。今日の朝買ってきました。昨日と一昨日買ったのもあるのでたくさん食べていいですよ」

「通い詰めてるの!?」

「太るわよ、シェリスちゃん……」

といいつつも、娘さんもちゃっかり席について、しばしの休息をとるようである。
大騒ぎの前夜祭まで、つかの間のゆったりした時間を、彼女たちは楽しむことにした……。



""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
【今回のくもつ亭】
20130502060936fb3.png
「……仮装?なんだいそれは」

20130502060836bb2.png
「ハロウィンには仮装するんだよ!はい、ユーリは狼男でいいかな」

cw_asato2.png
「おい、かぼちゃはもういいよ……もっとかっこいいのねーのかよ」

cw_sariman.png
「なぜ私はゾンビなんですか」

20130502060836bb2.png
「…あれ?エルトは?」

20130502060838464.png
「『魔法使いの仮装ということにしておけ』って言って出て行きましたけど」

20130502060836bb2.png
「……それ、いつも通りの格好ってことだよね…?」



改めて、りり様のシナリオで『かぼちゃの日』でした。
短い中にちょっとしたお遊び要素がぎゅっとつまった楽しい短編です。
廊下の隅にいる南瓜の影には「トリック」を選んだ方が楽しかったりするんですね…大胆かつ華麗なバナナの皮!
リプレイではスルーしてしまいましたが、地味に親父さんは無事なのか…?続きもぜひ遊んでみたいです。


掲載内容に問題がある場合、お手数ですがくもつまでお知らせ下さい。
対処致します。


web拍手 by FC2
この記事へのトラックバックURL
http://kumotsu.blog.fc2.com/tb.php/57-7eb59802
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
うわあい、ハロウィーンだ!
季節もののシナリオは、やはり時期をとらえてプレイすると面白いですね!
こちらのシナリオはまだやったことがなかったので、後日調べてみます~。有翼人さんたちの会話が可愛らしくてニコニコしました。アサト通常営業過ぎて…うん…ww
それにしても、ミネルバさん…クドラまでならともかく、アッチャラペッサーはまずいですよww

最後の方に菓蜜工房入れていただきありがとうございます!とりあえず今はモンブラン食べたいです!ww
Posted by Leeffes at 2013.10.15 23:28 | 編集
>Leeffesさん
ちょうどいい時期に素敵なシナリオに出会ったので、これやー!とばかりにやってしまいました。楽しかったです。
ハロウィンとクリスマスは季節シナリオが充実してていいですね…実にいい……DLは作者様のサイトから可能ですよ~。

はたから見てると有翼人2人の関係ってよう分からんよな、と思って書き出してみたんですが結局よう分からんですね!いつも前後編にまとめるのが精一杯のくもつです。
アッチャラペッサーと叫ぶとMale-OLD03(と02).bmpの人がやって来そう…です:(;゙゚'ω゚'):

菓蜜工房さんもお借りしてしまいました。ピンク色の半エルフが入り浸っていても、見逃してやってください……
(アップルパイが食べたい…)
Posted by くもつ at 2013.10.16 21:03 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。