2013.06.30

きまぐれリプレイ『ニキという人』:後編

後編です。前編よりお読み下さい。



魔術師のアジトはいくつもの小部屋が扉で仕切られた仕組みになっており、不慣れな者にはやや攻略に時間を要した。
ごろつきたちを手際よく打ち倒し、施錠された扉を開きつつ奥へ進むと、はたして最後の大扉が姿を現した。


「…準備は良いか」

魔術師の言葉に冒険者達は頷き合う。
……私はハーゲンのことを考えていた。身体の準備は十分とは言い難い。彼らに少し待ってもらうよう乞い、私は念入りに腹横筋をストレッチした。


「………」

彼らは特に何もコメントしなかった。私の集中をさまたげまいとする配慮、痛み入る。おかげで心の準備も完了した。
重苦しい音を立て扉が開かれる。ごくりと咽喉が鳴った。






「ハーゲンを、私の愛しい人を返せ!」

ScreenShot_20130624_020828971.jpg
▲ドーン(爆発.wav)

乗り込むなり、私は存分にストレッチをすませた腹筋を使いそう言い放った。
待ち構えていたのはごろつきどもと……中央に女が一人。奴がターナーであろう。
ターナーは不遜な態度で我々に指を突きつけたかと思うと、驚くべき台詞を口にした。


「断るンだカラネ!ハーゲンはワタシの所有物なんだカラネ!」

……何!? ま、まさかこの女……彼とを交わしたというのか!?

「そ、そんなわけ無いんだカラネ!むしろ、人類として認めてないんだカラネ!」

……なんと……ハーゲンをとして崇めているとは!

「違ーぅ!」

ムゥ、では、穢れ無きハーゲンを邪神の生贄にするのか!?

「……。駄目だ……ツッコミ所が多すぎる……」

ブラザー・サリマンが何か呟いていたようだが、この時の私の耳にはまったく届いていなかった。
何故ならば、ターナーの後ろに姿を現した褐色の小山は……ああ、あれは、見間違える筈もない…!


「ハーゲン、来るのだカラネ!こいつらを殺すのだカラネ!!」

「…ブラザー・ハーゲン!」

ScreenShot_20130630_182144214.jpg


「HAHAHAHAHA!!そういうわけだ。死んでもらうぞ、ニキ!

堂々としたブロンズの巨躯。灼々たる笑み。そこにいたのは紛れもなく愛しいハーゲンだった。
何故だハーゲン。いったいどうしちまったっていうんだ!


「フゥム、簡単なことさ。私はターナーに力と美に関する全てを売った!私は変わったのだよ、ニキ!」

そんな……。
――あの日。ハーゲンと出会ったあの日、私は闘技場で一人、自分の無力を嘆くばかりだった。
そんな私にも声を掛けてくれたのがハーゲンだったんだ。「ブラザー」と呼びかける彼に反発する私に、彼は優しくこう言ってくれたのだった。
――君の名前のニキに一文字足せば、立派なアニキじゃないか。
その言葉に救われた。自信に満ちた、強い、この男のようになりたい。いかしてるぜブラザー。そう思ったものだ。
だが、今の彼は……。
私は拳を握りしめた。


「ハーゲン……私は!私は、あなたを倒す!アニキの名に懸けて!

「HAHAHAHAHA!!できるかな、ニキ!」

「……。ツッコミたい……一括してツッコミたい……」

私は雄叫びを上げた。それが戦闘開始の合図だった。


~~戦闘終了までダイジェストでお楽しみ下さい~~

ScreenShot_20130624_021237000.jpg
▲※愛・サバ折り:最大ダメージ・回避不可攻撃

ScreenShot_20130624_021249530.jpg
▲サリマァァァアン!!

ScreenShot_20130624_021341093.jpg
▲そのまま削りきり、勝利!


「……成長したものだな、ニキよ」

ハーゲンは膝を着いた。私は首を振って彼に答えた。

「…違うよブラザー。友達がいたから、ここまで来れたんだ!」

私は力強くマイフレンド達を振り返った。サリマンはサバ折りで意識不明である。

「ハーゲン、帰ろう!ブラザー・ハーゲンの居ない生活は、もうたくさんだ!」

フ……とハーゲンは小さく笑った。そして、ああ、帰るとも!彼は確かにそう言った。
この上なく嬉しい言葉だったが、私はいささか驚いてしまった。これほどあっけなくいくとは思っていなかったからだ


「そんなに驚かないでくれよ、ブラザー・ニキ!私は君を鍛えたかったのさ。これはエクササイズだったのだよ!」

「なんだってブラザー!?」

エクササイズ……全てはハーゲンが私の為に仕組んだことだったのか。
なんてこった、ブラザー!そうか、そうだったのか!


納得なのかよ!という空気が場に満ちたが、冒険者達は口に出さなかった。もう出す気がなかった。

「ハーゲン!!」「ニキ!!」

私たちはがっぷり抱き合った。二人の間にこれ以上の言葉は不要であった。





その後怒り狂ったターナーが我々を生きて返すまいと襲いかかってきたのだが、ハーゲンとの絆を取り戻した我々の敵ではなかった。
無事に日常を取り戻した私とハーゲンは、ふたたび冒険者の宿を訪れていた。


「この間は助かったぞブラザー!さあ、一緒に美の世界を探求しよう!」

「私のポージングが分かる御仁はどなたかな?」

我々はおもむろにカウンターの前で隆々たる体躯を披露した。すると給仕の娘がひかえめに声を掛けてくる。

「…あの~、サリマンさんたちなら、『オチがヨメる』とかおっしゃって、遠くの仕事に行かれましたけど」

なんと。私は唸った。流石はブラザー、見事だ。しかし……、私はハーゲンと頷き合った。

「逃がさんぞブラザー!HAHAHAHAHA!!」

「HAHAHAHAHA!!」

そうして私たちはリューンの街へ飛び出していった。抜けるような快晴だ。世界は今日も、美しい。


""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
【今回のくもつ亭】
cw_sariman.png「いたた……」
cw_asato2.png「やばいな、サリマンの腰に甚大な被害が」
cw_sariman.png「…いや、微妙に人聞きの悪いこと言わないで下さい。背中です。背中」
20130502060838464.png「でも、癒身で治ってよかったですね。すごい音してましたけど」
20130502060937db9.png「……正直あれで再起不能は死んでも死に切れんな」
20130502060936fb3.png「……。やはり僕には理解しがたいな、人間というものは…」
20130502060836bb2.png「あ、あのねユーリ、あれかなり特殊な部類だから真に受けないでね…」


改めて、平江 明様のシナリオで『ニキという人』でした。
ニキのキャラクターの強烈さと、知り合いPCの不憫さが際立つシナリオです。
サリマンがサバ折られちゃったのは主人公だからかなと思ったのですが、別にそんな事はなかったようです。おいしい…
最近ではアニキシナリオ見ない気がしますね。増えないかなあ、と思ったりしています。


掲載内容に問題がある場合、お手数ですがくもつまでお知らせ下さい。
対処致します。

web拍手 by FC2
この記事へのトラックバックURL
http://kumotsu.blog.fc2.com/tb.php/40-808601d0
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する