--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2
2013.05.27

きまぐれリプレイ『おいしいごはんの作り方』:後編

後編です。前編よりお読み下さい。






「――いやー、ここでみんな断って、アサト一人になってたりしたら面白かったのにねえ」

「ひでえ」

ScreenShot_20130526_215809068.jpg

――3日後、一行は目的の村に到着した。
村は三方を山に囲まれた荒野にポツリと存在しており、時折吹き付ける乾いた風が立ち並ぶボロ屋の壁にぶつかり、きぃきぃという不快な音を奏でていた。
通りには人っ子一人見あたらない。ゴーストタウンって感じ、と率直な感想をカチュアは述べた。


「…ところで、エルト。深く考えずにここまで来てしまいましたが、何から始めるつもりなんです」

「…此方は地龍についてもこの村についても、詳しいことを何も知らない。まずはその辺りの事情を村人に訊くのが先決だろう」

つまり、情報収集だ。シェリスに水を向けられたエルトは淀みなくそう答えた。

「とりあえずは、地龍の所在・動向と村の現状の把握――それから、地龍戦で役立ちそうな情報の収集かな?」

「…ああ、そんな所だろう。それさえ分かれば、後は実力行使で何とでもなる」

「なら、私は西側の家を当たってみますよ。一通り聞いたらここに戻ります」

「あ、私も行きます、サリマンさん」

サリマンの後を小振りなリュートを抱えたシェリスがついてゆく。

「じゃ、オレ達は東側回るか。また後でな。カチュア、エルト、行くぞ」

「はいはぁ~い」

そうして、彼らがふたたびこの場所に顔を揃えたのは1時間後だった。





「……思ったよりも重い話になっちまったなあ」

泥にまみれたシャベルを担ぎながら、アサトはしみったれた洞窟の天井を仰いだ。
的確な情報収集の結果、割り出した地龍の住処――ミミズの穴と呼ばれているらしい――を、一行は進んでいる。
大蜘蛛を退治したり、キノコのかけらにまみれたりしつつも、もうずいぶん奥まで来たように思えるが、日の差さない洞窟の中では時間の感覚も少々危うい。


「……アサト、この依頼、本当に受けるの?」

仲間より数メートルほど先行して歩くアサトは、少し後ろでたいまつを掲げたカチュアをちらりと見た。
村を回ってみて分かったことだが、見捨てられたこの地方からは多くの村人が逃げ出しており、残った者達の生きる蓄えもすでに尽きかけていた。
次の貢ぎ物を要求された時――彼らは飢えて死ぬよりほかない。もしくはそれより前に地龍に食われるか、だ。


「もし、報酬を受け取ったら、あの娘さんは身売りされちゃうのに――」

「……村長とあの子が話し合って決めたことだ。こっちが口出しするようなことじゃねえよ」

「……うん、そうね。分かってるけど……」

後味が悪くなるね、とカチュアは続けた。
村長から地龍の住処を聞き出した際、冒険者達はある依頼を持ちかけられた。正式な、村からの地龍の討伐依頼である。
対価は銀貨1000枚。村の様子を鑑みても、とても彼らが用意できる金額とは思えなかった。
当然の疑問を問いただしたところ、そういうことだったのだ。村長はたいそう可愛がっているたった一人の孫――セリアという名の、村一番の器量好しの娘――を身売りして我々に銀貨を支払うつもりなのだ。

セリアとは、村長の家までの道中を同じくしただけであるが……確かにゆきとどいた人柄を感じさせる娘だった。たぶん、自分よりも他人を大切にする性格なのだろうと思えた。どんなに辛い事情があろうとも。


「あたしそういうの、ちょっと苦手だなぁ……。飯がまずくなるというか」

「オレもまずい飯は大嫌いだよ、カチュア」

アサトはそれだけ返して会話を打ち切った。――先の空間に、巨大な生き物の気配を察知したからだ。
シャベルを捨て大振りなナイフを抜き放つと、後ろの奴らに知らせてくれ、とささやいた。



ScreenShot_20130522_205451110.jpg
▲※あまり深入りしたくないかんじの村長の素性についてはスルースキルで対処しました





―――その『獣』は、天球状のドームの下で、財宝や食料に囲まれるようにして悠然とこちらを睨み付けていた。
その全長は10mほど。深緑の鱗で覆われた、翼を持たないアースドレイクの姿が、たいまつの灯りにぬらぬらと浮かび上がる。
ドラゴンとしては小ぶりであるが、彼ら冒険者が通常対峙する魔物の中ではかなり大きな部類に入る。
村の者達はこれを“大喰らい”と呼んでいることを、一行は村長から聞かされていた。


ScreenShot_20130522_212158125.jpg

『…ふんっ、虫どもが騒がしいとは思ったが、鼠が舞い込んでいたとはな』

“大食らい”は、文字通り地の底に響くような人語で一行に語りかけた。
…だが、悠々とした音声に滲み返るものは決して理知と余裕ではないことを、サリマンは一目で感じ取っていた。
傲慢、そして油断。村民に塒を特定されるような行動をとる時点で、大した知能を持っていないという彼の想定はやはり間違っていなかったようだ。


『見たところ、心得の無い者ではあるまい。さては、村の猿どもに儂の退治を依頼されたか――?』

「……さてねえ。そんな事は、死にゆく者には関係ねえだろう?それとも冥土の土産にぜひとも聞きたいってか?」

『「――っ!?」』

冒険者の不遜な物言いに面食らったのはドラゴンのみならず、カチュアもだったようである。

「(ちょっ、アサト!?挑発してどーすんのよ!?)」

『…適当にあしらってから喰ろうてやろうかと思ったが、今の言葉で気が変わった!貴様等の様な身の程知らずには、嬲り殺しがお似合いだ!』

ずうん、と今度こそ地鳴りが起こった。激昂したドラゴンがその身を起こし、鎌首をもたげる。いまや剣の林かと見紛う牙をむき出しにして、すさまじい形相で一行を睥睨していた。
カチュアはというと、すでに諦めがおになって天国のお父さんへ挨拶しに行かんとするところであった。


しかし―――

「…まったく、よく舌の回る地龍様ですよ」

『!?』

「舌より頭が回れば、こんな所で死ぬ事も無かったろうに」

『!!?』

「悪いが、こちとらてめぇと下らない話をする舌など持ち合わせていない。味わう舌なら持っているがな!

『―――ッ!!!!』

ドラゴンに投げかけられたのは、彼が当然想像していた畏怖などではなく、さらなる挑発であった。
ちっぽけな猿どもののたまいに地龍は完全にプッツンした。いまや理性の影などどこにもない。


『…良かろう、貴様の様な奴は……いたぶって!いたぶって!いたぶりぬいて――!』

地龍による爪の一撃が、にやにやと笑うアサトめがけて高速で振り下ろされる!

『ごめんなさいと言わせてやる―――ッ!』

≪魔力の灯りよ≫

刹那、取り決め通りエルトが放った魔法の光球が天井付近で炸裂した。
白に近い光が一瞬あふれかえり、暗がりに住む幻獣の目を眩ませた。同時に日の下に住む者達に戦場を照らし出す。


「…こいつは活きがいい!料理のしがいが―――あるねッ!」

狙いの狂った爪を躱し、アサトは遊んでいるかのようにそれをひらりと飛び越える。

意識を飛ばしかけていたカチュアも、この一瞬の出来事を経てはっと我に立ち返った。


「(――ええいっ、ビビるなあたし!こうなりゃ一蓮托生よ――!)」

女は度胸!やってやれないことはない!

「か、覚悟なさいっ!こんの、くそったれドラゴン!あんたの納まるべきはあたし達の胃袋の中よ――ッ!」

ScreenShot_20130522_212437405.jpg

この世にまずい飯屋と、――悪の栄えた例はないッ!

「(…いい啖呵切るね、カチュアめ)」

ヒューッ、と軽やかな口笛。―――かくして、冒険者対龍の戦いが始まった。





地龍退治を済ませて穴の外へ出ると、辺りはもうすっかり夕日に染まっていた。
沁みる夕暮れの光に目を細めながら、5人の冒険者達はあなぐらから這い出た。焦げたマントと『地龍の尾』を引きずって。

エルトがやや深手を負ったものの、警戒していた“竜の焔”もシェリスのウンディーネで凌ぎきり、最後はアサトがどや顔で決めゼリフを吐きながら哀れな龍にとどめを刺した。


ScreenShot_20130522_213007492.jpg
▲その時の映像です

あれは誰に言ったんだろう、とは思ったが、そんなくだらない事にいちいちツッコむ元気もなかった彼らは無言で村にたどり着いた。
見れば、村の入り口には一人たたずむ人影がある。金の髪を夕暮れ色に染めた……冒険者たちを村長の家まで案内した村娘――セリアであった。


「…セリアさんではないですか。こんなところでどうしたんです。もう日暮れですし、早く帰らないとおじい様が心配しますよ」

あっ、と小さく声を上げて一行へ駆け寄ってきたセリアを、首を傾げたシェリスが出迎えた。

「ご無事だったのですね…よかった……皆さんが大ミミズの穴に向かわれたと聞いて、お帰りが遅いので、心配で……」

「……ああ、それは悪かったな。だが、この通りピンピンしている。問題無い」

――いえ、あなたがピンピンしているかどうかはすごく微妙ですが。アサトに肩を貸されたエルトを横目で見つつ、シェリスは地龍を討伐した旨を彼女に告げた。
セリアは一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに瞳を潤ませて、呟くように礼を言った。


「ありがとうございます。…本当に……ありがとう……これで私も……」

気持ち良く村を去ることができます。絞り出すようにそう言って、セリアはひとしずくだけ夕暮れ色の涙を落とした。
カチュアはそれが足下の土に染みこむのを、じっと見ていた。


「………」

「今晩は村へお泊りください。報酬の方は明日にでもお渡しできると思いますので……」

「…さて、報酬?なんの事だったかなあ?この村には、食料調達に来ただけのはずなんだが……」

「――っ!?」

セリアとカチュアは弾けるように顔を上げた。アサトは煤けた顔で空々しく首を傾げている。

「できるだけやってみるとは言ったが、依頼を受けるなんて一言も言ってなかったしなあ。受けてもいない依頼の報酬を受け取るわけにはいかない。…だから、あんたが村を出る必要もないんじゃねえか?」

「そ、そんな…でも……」

セリアの瞳が揺れている。

「いいんだよ、それで。…それよかお嬢さん、悪いがどっかの台所を貸してくれねーか?うちのカチュアが“絶対美味しい”っていう料理を作るんだけど、調理場がなくってさ」

「私からもお願いします。…ああ、そうだ、なんならあなたもご一緒しませんか。料理はみんなで食べた方がうまいと思いますし。ねえカチュア」

サリマンが後を引き取ってそう提案した。カチュアも何度も頷きながら同意した。

「うん、そうするといいよ!腕によりをかけて、うんとおいしいのを作るからさ!」

セリアはもう、ぽろぽろとあふれるおびただしい涙を止めることができなくなっていた。
ありがとう、ありがとう、と繰り返しながら両手で顔を覆う彼女へ、カチュアはにっこり笑ってこう言った。


「――辛気臭いことなんて、みんなミキサーにぶちこんで、ミックスジュースにしちゃえばいいのよ!」




ScreenShot_20130522_213540848.jpg

「……ああ、旨い!」

「――ふふん♪……あんたたちって、時々格好いいよねー」

「ええ? ――だから言ったろ、まずい飯は大嫌いだ、ってな」



(どや顔)
改めて、タナカケイタ様のシナリオ、『おいしいごはんの作り方』でした。
ヒロイックな冒険者像が楽しめる、コメディ調の楽しい短編……ですが、実際はもっとボリュームたっぷりです。
寄り道要素もありますし、うまく立ち回れば真銀の鎧も入手可能…!?
リプレイ上はしょりまくりなのが残念ですが、カチュアのキャラクターは雑談や本筋と関係ない部分で真価が発揮されているように思いますので、カチュアをクリックしまくるのがよいかと思います。ええ。
ドラゴンより村長にビビる冒険者が楽しめる希有(?)なシナリオです。


掲載内容に問題がある場合、お手数ですがくもつまでお知らせ下さい。
対処致します。
web拍手 by FC2
この記事へのトラックバックURL
http://kumotsu.blog.fc2.com/tb.php/33-5fe0b2a0
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント

わあい、カチュアだ~!!
このシナリオ、お人よし冒険者にもシビアな冒険者にもなれるけど、やっぱりお人よしでやるのが一番好きなルートです。アサトたちによく似合ってますね~。

前半でベニマリソウお供えされちゃったリーダーに吹きました。サリマン・・・そんなお茶目もしれっとやれるんだね・・・。(笑)
止めの絶翔かっこよかったです!
Posted by Leeffes at 2013.05.29 07:43 | 編集

いらっしゃいませー!
スカッと爽快なシナリオですよね。泥をすするようなシビア~な展開も好きなのですが、この一行の場合、鬱ブレイカー!な感じの方がイメージに合ってるかなあと思います。
報酬を受け取る選択をした場合でも、実は小粋な展開になることに今回初めて気が付きました…ヒューッ!

サリマンはなにか、確実に染まってはいけない方向に染まってしまっている気配がしますね。ハハハ(他人事)

……実はトドメ、撮影し忘れてテイク2というオチなのでした。かっこわりい!コメントありがとうございましたー(*´ω`*)
Posted by くもつ at 2013.05.29 23:18 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。