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2013.05.02

きまぐれリプレイ『劇団カンタペルメ』:後編

後編です。前編よりお読み下さい。



「…うわっ。ちょっと、すげぇ人だぞ!?」

舞台袖から客席を覗いたアサトが言わずとも、全員がおびただしい観衆のどよめきを肌で感じ取っていた。
座長があちこち頭を下げてまわり、『リューンより期待の新人あらわる!』…として新たに打ち出した広告は、一行の想像以上の効果をもたらしたようである。
この結果は、芸術都市の気風、カンタペルメの実績、座長の情熱、ミューゼルの加護、あるいは――その全てか。


「へへー、緊張するなあ」

「……ほんとうに緊張してますか?アサトさん」

胸に五指を添え深呼吸をしていたシェリスは、思わずそう聞き返した。
笑いながら斜に構えたその立ち姿は、ふだんとまったく変わらないからだ……『兄王子』の衣装をのぞいては。


「してるしてる。なあ、弟よ?」

「……知るか」

エルトは脇の大道具棚に脚を組んでじっと座っていた。エルトもまた衣装以外はふだんと変わらないように見えるが、彼こそその長身にピリピリとした緊張感を纏っていることをシェリスは感じ取っていた。

「…サリマンさんは落ち着いていますね。私も見習いたいです」

「いや、平静をよそおってますが、内心どきどきですよ。語り手役は第一声ですしね。主役であるあなたたちほどじゃないでしょうが」

なんなら心臓取り出して見せましょうか、と、きっちりと語り手の衣装を纏ったサリマンはうそぶく。
シェリスは笑った。空気が少しやわらぐのを感じた。


「――ごめんごめん、羽根押し込むのに手間取っちゃった!」

「……くっ、背中が窮屈なんだが」

「我慢なさい。ちょっと違和感はあるけど、ふたりとも完璧よ」

有翼人たるミネルバとユーリを人間に仕立て上げた赤毛の座長がやってくる。
一行をみまわすと、落ち着いているわね、と声をかけた。サリマンが向き直る。


「さっきから客席をざっと見てますが怪しい人間は特に見あたりません。まあ、人が多すぎてなんとも」

「動き出すのは幕が開けてからでしょうね。皆が舞台を注目している、その隙をつく腹づもりでしょ」

「…演技だけでなく、そっちも注意していないと。ほんと、今回は重労働ですよ」


1場に登場するのはサリマン、シェリス、ユーリである。彼らは静かに舞台袖へ移動していった。

「……幕が上がるな」

開場前のはりつめた静寂の中でアサトが呟き、座長がそっと頷く。
―――舞台『シンディーリア』の開幕である。




ScreenShot_20130502_072558782.jpg

昔々――
そのフレーズから始まった物語は、とある羊飼いの家にシンディーリアという美しい娘がおり、草原と羊との暮らしを愛する彼女がいかにして城の舞踏会をおとずれることになったかを朗々と語った。

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『あとからお話を聞かせて。
 あなたを通じてお姫さまになった夢を私に見せてちょうだい。お願い…』

舞踏会にいけなくなってしまった姉の代わりに。足をくじいて踊れない姉に一夜の夢を見せるため。

20130502060838464.png
『わかったわ。姉さんの代わりにいく。
 帰ったらたくさんお話を聞かせてあげるから、待っていてね』

破れてしまったドレスの代わりに、ほつれた羊飼いの衣装を。
ところが、それでもなお、シンディーリアは美しかったのです。舞踏会に来た、どの娘よりも。



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『美しいご婦人。よろしければ私と踊っていただけませんか』

20130502060838464.png
『まあ、王子様。私はこの通り、みすぼらしい下賎の娘です。
 踊りだって、練習はしたのですけど下手ですし……、それでもよろしいの?』

貴女だから踊りたいのです。弟王子はやさしく告げました。

この時、客席を見たエルトの目が平時のするどさを取り戻したのをシェリスは見た。
エルトは向き直ったが、シンディーリアを見ていたのではない。
―――『相手が動いた』。事前に決めておいた、舞台袖への合図である。



袖にひかえていた3人――サリマン、ミネルバ、ユーリの反応は早かった。
たちまち、冒険者と思われる不審な5人を発見した。


ScreenShot_20130502_073459877.jpg

「真夜中の鐘にはまだ早いけれど、お帰り願いましょうか」

サリマンの語り手らしい口上とクロスボウは、リーダーらしき男へひたりと向けられていた。

「な、なんだ。誰かと思ったが、舞台に出てる俳優サンじゃねーか」

たれ目の男はぎょっとしたように3人を見て、それから調子の良い口調で答えた。

「すいませんねぇ、いやすいません、俺シンディーリアちゃんがあんまり可愛くてー、つい傍で見たくなっちゃってェ」

「リーダー、こいつら冒険者よ?」

「ぬぬぬあ、ぬあんだってぇ!?」

鳶色の髪を結い上げた女性の忠言に、男はやっと気が付いたようだ。
"ミューゼルの美"を狙う曲者も、いままでのいやがらせも、すべて雇われて彼らがやった事らしい。
簡単に口を割ってしまったわかりやすい彼らに脱力しながらも、ミネルバは剣を抜いた。


「なんかちょっと憎めないけど……ここで成敗してあげるよ!覚悟!」

ひとしきり闘るか闘らないかでもめながらも、最終的に彼らも武器を取った。

「今度のヤマはデカいからな。……腹くくるか。受けてたつぜ!」
「うおおおおおお!!」

戦闘開始と同時に、マルコと呼ばれた頑強な体格の男が猛然と突進をしかけてきた。
まさかの行動に、冒険者達は焦った。なぜなら――


「ちょ、この位置はまずッ――!」

後ろは、本番中の舞台だ!


ものすごい音と共に舞踏会の場に転がり出てきた5人(+3人)に、壇上の役者達は固まり、座長は悲鳴を上げた。

ScreenShot_20130502_073743375.jpg

……誰もが、口をきけなかった。固唾をのむ観衆の視線が一同に注がれているのが痛いほど分かる。

それが戸惑いのどよめきに変わる前に、芝居がかった声が沈黙を切り裂いた。


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『――敵国の侵略だ!!』

兄王子である。

『二年前に結んだ休戦協定を忘れたのか! 捕らえろーッ!』

「(ナイスです…!あとでエール奢ります!)」

その言葉を皮切りに、全員が手足の自由を取り戻した。

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『……兄上、私たちも日ごろ鍛えた剣の腕を見せる時が来たようですね』

弟王子が腰に刷いた剣を抜きはなってそう宣言すると、兄王子はにやりと笑って頷いた。

「(シンディー頼むぜ、弟よ。向こうはオレが片す)」

「(誰が弟だ)」

エルトは下がり、シェリスの前に立った。対してアサトはすばやく進み出る。

「あ、あの、えっとその、ごほん。わーれこそはァーー帝国騎士団にその人ありとうたわれたーーァ」

「(…ノリいいなこいつ)」

とアサトは思った。
弾けるような速さで剣を抜き、名乗っている最中の相手に敢然と飛びかかる。
舞台の上で、ひょうとはばたくような風が旋回した。
飾りのレイピアで美事に5人を打ち据えたのは、リューンで『烈梟刃』と呼ばれる剣術であった。


公演は、大歓声のうちに幕を下ろした。
その評判はあっという間に街中に広まった。とりわけ、いずこからか突然現れた無名の役者たちの熱演と、
迫力のある剣戟シーンは語り草になったという。

…舞台袖にしょっぴかれたウゴリーノ一行はというと、結局最後まで観劇することになった。
俺シンディーちゃんみたいな子と結婚してぇーー!と叫んで仲間にどつかれていたウゴリーノとはちょっぴり友達になれそうな気がしたアサトであった。



「貴方たちには、劇団カンタペルメの命を救ってもらったわ。離れていた役者たちも、戻ると言ってきたの」

一行を見送るために入口に立った座長はそんな事を告げた。

「むしろ、戻らせてください、って涙を流して詰め寄られたわ。こっそり観に来てて、アナタたちの舞台によっぽど胸を打たれたみたい」

「とんでもない素人演技だったんですが」

冒険者にもどったシェリスがそう答えると、座長は彼女の手を握り、じっと瞳をのぞき込んで微笑んだ。

「いいえ。あの舞台の上で、アナタは『シンディーリア』だった。アタシも胸が熱くなったわ……」

「……はい。それはきっと、座長さんのおかげなのでしょうね」

シェリスは赤くなった頬を隠そうと俯き、そのまま座長に抱きついた。じんわりと胸に温かいものがあふれた。
座長は彼女の背をぽんぽんと叩き、ゆっくりと離してやった。


「また来てちょうだい。アナタたちもすっかり役者として有名になってしまったんだから。
 いつだって喜んで、アナタたち主演の臨時公演をうつわよ」

ScreenShot_20130502_075024578.jpg

「…ツケが溜まったら、考えるよ」

そう答えて、ユーリはかすかに笑っていた。
彼が人間相手に微笑むことなどとても珍しいことであったので、ミネルバは驚きながらも嬉しくなった。


「それでは座長、――お元気で」

「そっちこそ。 ……つまんない依頼で、おっ死んだりしたら許さないわよ!」

ドスのきいた座長の声を背に、
――ええ、きっと、また。 そう、シェリスは心に刻んだのだった。




改めて、柚子様のシナリオで『劇団カンタペルメ』でした。
簡潔に書こうとはじめたのに、これだよ……。文章を書くのは難しいですね。
劇後半はばっさりカットしてしまいましたが、本編ではちゃんと語られています。現在は「シンディーリア」の他にも「三獣士」が収録されていて、とてもお得でいいと思いました!(小学生並みの感想)
しかし似てない双子だったなあ。


もし、このシナリオリプレイしちゃ駄目だよ!…というのがあれば教えてください。
対処させて頂きます。
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